こころふ日記 ~公認心理師が子育てや心理学のことなどを語るブログ~

公認心理師のこころふが、子育てや心理学のことなど気ままに書くブログです。

“語りかけ育児”の大切さについて ~行動遺伝学を参考にしながら~

こんにちは 

2児の父であり長期育休中公認心理師こころふです 

 

育休前は心理職として 

子どもの発達や不登校のことなど、相談対応していたことがありました。 

 

今回は、子どもへの“語りかけ育児”がどのくらい大切かということについて 

書きたいと思います。 

 

さて子どもの発達のことでよくある相談として、 

「言葉の遅れ」があります 

 

「2歳を過ぎても単語がでないとか 

「3歳になるのに言葉が増えない」とか 

そういった相談ですね。 

 

この中で、心理職はどういうことをしているかというと、 

親御さんから、お子さんの様子をききとったり、心理検査を行ったりします。 

 

 

その結果、言葉や発達に遅れがあると判断されれば、 

それを親御さんにフィードバックし、言葉や発達を伸ばすために何が必要なのか、 

アドバイスしたりします。 

 

定番のアドバイスの一つは、 

 

「お子さんへの言葉かけ(語りかけ)をこころがけてくださいね」 

 

です。 

 

 

そう、言葉かけ(語りかけ)は大事なのです。 

 

でも正直、「そんなの分かってるよ~」とか 

「もうやってるよ~」と内心思う人も多いだろうなとも思います。 

 

実際、言葉の伸びぐあいというのは個人差があって、 

子どもによって早かったり遅かったり、ペースにけっこう違いがあります。 

 

なので、パパ・ママがめちゃくちゃ頑張って言葉かけをしていても、 

なかなか言葉が伸びないという子どもは、もちろんいます。 

 

 

では、「結局のところ、言葉かけ(語りかけ)ってどのくらい効果があるの?」 

という疑問について、考えてみましょう。 

 

ここで参考にしたいのが、「行動遺伝学」です。 

 

詳しくはふれませんが、一卵性双生児や二卵性双生児といった 

「ふたご」を調べることで、 

人間の能力や性格がどの程度遺伝や環境に影響されているか、 

といったことを明らかにする学問のことです。 

 

正直なところ、私も別に全然詳しいわけではないのですが、 

最近関心のある分野ではあるので、ちょっと調べてみました。 

 

まず、「遺伝か環境か」というテーマは、昔から議論されてきました。 

ざっくり言えば、 

人が成長するのに、遺伝要因と環境要因のどっちが大事なのか? 

という話です。 

 

結論としては、「どっちも大事!」 

ということになります。 

 

ただ、その分野によって、どちらがどれくらい影響しているのか、 

といったことはけっこう変わってきます。 

 

例えば、IQ、つまり一般知能は遺伝要因による影響がかなり大きく、 

家庭環境の影響はほとんどないと言われています。(年齢によっても変わってくるけど) 

 

また、遺伝的影響がさらに強いのは、 

音楽的才能や数学的才能らしいです。 

 

この2つは、ほぼ9割方、遺伝要因で説明できるらしいので、 

例えば音楽家として成功できるかどうかは、 

ほぼ生まれつき決まってしまうということになります。 

 

なんか身も蓋もないような話に聞こえてしまうかもしれませんが、 

逆にいえば、何かが得意でないことを、 

極端に環境のせいにしたり、努力不足のせいにしたりしなくてすむという点では、 

この話を聞いてホッとする人もいるのではないかと思います。 

(私が高校数学でつまづきまくったのも、努力不足が原因ではなかったんだ。きっとそうだ・・・。) 

 

行動遺伝学の第一人者である、安藤寿康さんの著書である 

「遺伝子の不都合な真実」によれば、 

行動遺伝学の3原則は、 

 

①行動にはあまねく遺伝の影響がある 

②共有環境の影響がほとんどみられない 

③個人差の多くの部分が非共有環境から成りなっている

 

とのこと。

 

②の「共有環境」というのは、 

(厳密にはちがうけど)ほぼ家庭環境と同じ意味だと思ってもらってけっこうです。 

 

つまり、家庭環境の影響って、実はかなり小さいってことを意味しています。 

 

「え~、うそ!?」って思ったのは私だけではないはず。 

でも、どうやら本当にそうらしいのです。 

それよりも、学校とか地域のコミュニティといった非共有環境の影響の方が強いとのこと。 

 

ただ、これはあくまで“原則”です。 

つまり、家庭環境の影響がでやすい分野というのもあるのです。 

 

では、最も家庭環境の影響が強い分野とはなにか? 

 

そう、「言語能力」なのです! 

 

どうやら言語能力の半分くらいは、家庭環境によって決まってくるようです。 

 

そうと分かれば、子育てのなかで、ここに力を注がない手はないですよね。 

親の言葉遣いとかも、子どものそれに大きく影響してきますよね。 

 

ここで「語りかけ育児」の重要性が見えてきました。 

 

イギリスの言語治療士であるサリー・ウォードさんが書いた 

『わが子の発達に合わせた1日30分間 「語りかけ」育児』という有名な本があります。

原題はBaby Talk

 

先輩心理士が勧めていたので、私もだいぶ前に買ってはいたのですが、 

分厚くてとっつきづらく、ちょっとしか読んでいませんでした(笑) 

ただ内容的には、素晴らしい本だと思います。 

 

これによれば、 

1日30分間、他の刺激(音とか)をなるべくシャットアウトした状態で、 

子どもと一対一で向かい合い、 

子どもが注意を向けていることについて、ゆっくりと語りかけてあげることが大事。 

 

“語りかけ”により、言葉の遅れがあった子どもでも、 

年齢相応の水準に追いつきやすくなることが分かっているそうです。 

 

というわけで、ちょっと回りくどくなりましたが、結論は、 

 

「語りかけ育児は、子どもの言語発達にとっても役に立つよ~!!」 

 

ということになります。 

 

なにやらよく話題になる“早期教育”に力やお金を注ぐよりも、 

よっぽどコスパがいいんじゃないかな。 

 

さて、わが身を振り返ってみると、 

正直、私の“語りかけ”は、今までかなり貧弱だったと思います(-_-;) 

 

妻には、「もっと子どもに話しかけなきゃ!」なんて言われる始末ですから…。 

仕事では「言葉かけが大事です!」なんてアドバイスしてるのに…情けない。 

 

分かってても、実践しなきゃ意味ないですよね。 

 

これからは心機一転、“語りかけ”を意識して、 

子どもに向き合いたいと思っている今日この頃です。