こんばんは。
2児の父であり、長期育休中のこころふです。
10数年いわゆる心理職として働いてきた経験から、子育てに心理学をどの程度活かせるか、試行錯誤する日々を送っています。
さて、最近世間でよく聞くようになったHSPという言葉あります。
数年前からときどき耳にし、そういう言葉があるというのは知っていたのですが、
ちゃんと勉強したことはありませんでした。
ただ、芸能人(ロンブーの田村淳さん)のカミングアウトなどから、一般的にも知られるようになってきているのを知り、調べてみようと思いました。
今回は、HSP(HSC)について私なりに思うことを書かせていただきます。
※『HSCの子育てハッピーアドバイス』(著:明橋大二)を参考にしました。
HSP(HSC)とは?
まず定義から説明します。
HSPは、Highly Sensitive Personの略であり、「とても繊細な人」という意味です。
アメリカの心理学者エレイン・アーロン氏が提唱したものであり、精神医学上の概念ではありません。病気や障害ではなく、あくまで一種の気質として捉えられています。
5人に1人くらいの人がこれに当てはまると言われています。
HSPの特徴を表す言葉として、「DOES(ダズ)」があります。
Depth of processing・・・深く考える
Overstimulation・・・過剰に刺激を受けやすい
Empathy and emotional responsiveness・・・共感力が高く、感情の反応が強い
Sensitivity to subtleties・・・ささいな刺激を察知する
という4つの特徴の頭文字をとったものです。
例えば、騒がしい音に敏感で気分がわるくなってしまったり、怒られている他人を見て自分が怒られたような気分になり落ち込んでしまったりといった、日常生活での困り感や、生きづらさを感じやすい傾向があります。
反面、感受性が豊かであり、人に細やかな気配りができたり、芸術方面に才能を発揮したりと、よい方向に気質を活かしている人も多くいます。
ちなみに、上記のような特徴を持つ子どものことを、HSPと区別して、
HSC(Highly Sensitive Child)と言います。
自分にも当てはまるのでは?
この概念を知って最初に思ったことは、
「これって自分にも当てはまるんじゃね?」ということでした。
今回試しにチェックリストで確認してみました。
チェックリストは、「自分を取り巻く環境の微妙な変化によく気づくほうだ」「他人の気分に左右される」などの22項目からなり、12個以上あてはまれば、HSPの可能性が高いというものでした。
私の場合、大体12個くらい当てはまりました。HSPど真ん中とは言えないまでも、HSPに限りなく近い状態だと言えるかもしれません。
昔から親に「敏感な子」と言われていたし、自分でもそう思ってきたので、特に驚きはありません。
それから、実は長女もけっこうな「敏感っ子」であります。
例えば、Eテレの子ども番組のあるクイズコーナーを見ていたときのことです。クイズコーナーって、よく「ピンポーン」とか「ブー」って音がしますよね。その「ブー」という音が苦手だったらしく、その音が聞こえそうになると毎回テレビの前から逃げてしまうのです。
これ以外にも、何てことないテレビ上の演出を極端に怖がって逃げてしまうということはありました。
長女についても、子ども用のチェックリストを試してみると、案の定私と似たような結果で、HSCの可能性があるのかもなあと思いました。
立派に私の遺伝子をついでいますね(笑)
HSP(HSC)概念は誰にとって役立つのか?
HSP(HSC)という概念の意味するところは分かりました。
では、この概念を理解することのメリットは何でしょうか?
上記したように、HSPの方は世の中で生きていくのに、生きにくさを感じてしまう場合も多いと思います。
「何で自分は人と違うんだろう?」「何かおかしいんじゃないか?」
そんなふうに感じる方もいらっしゃると思います。
そういった方が、このHSPという言葉を知り、自分にあてはまるということが分かったとします。
「世の中には、自分以外にも同じような特性を抱えた人がたくさんいるんだ」という気づきや、「ようやく原因が分かった」という納得感は、ご本人の生きづらさを和らげてくれるかもしれません。
例えば、あるこころの病気を抱えている人が、医師から診断名を告げられることで、ようやく自分の辛さの正体が分かり、気が楽になるというケースが多々あります。このように、病気であることが分かることで生じるメリットのことを「疾病利得」と言います。
HSPは病気ではないので、「疾病利得」とは言えませんが、似たような経験をされる方も多くいることでしょう。
このように、HSPという概念を知ることで、自己理解につながり、結果的に気持ちが楽になるというケースでは、HSP概念がその人の役に立っているといえるでしょう。
周りの人の理解が得やすくなる
親や友人、教師などにHSP(HSC)であるということを理解してもらうことにより、できそうにないことを無理強いされなくて済んだり、苦手な部分をサポートしてもらったりと、その方にとって生活しやすい環境づくりがしやすくなるでしょう。
HSCの子への配慮については、『HSCの子育てハッピーアドバイス』に書かれている、
「ひといちばい敏感な子の自己肯定感を育む大切な10のこと」が参考になったので、以下に引用させていただきます。
①子どもを信じる
②抱きしめる
③共感する
④気持ちを言葉にして返す
⑤ネガティブな感情を吐き出させる
⑥スモールステップを設定する
⑦心の安全基地を作っておく
⑧その子のペースを尊重する
⑨少し背中を押してみる
⑩他人と比べるより、自分のゴールを目指そうと伝える
といったものです。
どれも大変納得できる内容ですが、よく考えてみると、これらの対応が大切なのは、HSCの子に限った話ではないなと思いました。
HSC気味な私の娘に対しても、とても有効な考え方だと思うので、参考にしていきたいです。
と、ここまでが、私が考えるHSP(HSC)概念を取り入れることで得られるであろうメリットです。
要は、自己理解の促進、安心感、さらに周りからのサポートを得やすくなるということですね。
では、逆にデメリットはないのでしょうか?
HSP(HSC)概念を取り入れることのデメリット
これはHSPに限った話ではないのですが、ある枠組みを過度に自分や他人に当てはめようとすることの危惧です。
例えば、20年くらい前から、発達障害という概念が徐々に浸透してきました。これにより支援が充実し、救われた発達障害を抱える方はたくさんいることと思います。
しかし、一般にもこの概念が浸透するにつれ、「自分は発達障害ではないか」と心配する方が急増します。
もちろん実際当てはまる方も大勢いるのですが、どう見ても考え過ぎだろうという方も中にはいます。
また、支援者の間でも「発達障害」という概念が当たり前に共有されてくると、「絶対に見逃さないぞ!」と意気込み、ちょっとでも気がかりな子は「発達障害疑い」とレッテル貼りされるケースが出てきます。
いわゆる「過剰診断」(実態を超えて多くの発達障害診断が出てしまう)も危惧されます。
HSPも、これだけ世の中に浸透してくると、「自分もHSPなのではないか」と思ったり、実際に専門家に相談しようとする人もたくさん出てくるでしょう。
それはそれで、先ほど挙げたメリットにつながればよいとは思いますが、ほんの一部しか特徴が当てはまらないのに、HSPだと思い込んでしまう人も出てくると思われます。
「自分はHSPだから」という免罪符を得ることで、少しでも苦手とすることには挑戦しなくなってしまうかもしれません。
こうなるとデメリットの方が大きくなってしまうと思います。
あと、怖いのは、うつ病や不安障害、発達障害といった、より深刻な状態を見逃してしまう可能性があるということです。
私は、HSPの特徴を知ったとき、刺激に過度に敏感であるという点が、発達障害と似ているなと感じました。
両者を区別しやすいポイントは、共感性が強いか弱いかだと言われています。
発達障害のある方は一般的に、他者の気持ちを読み取ることが苦手です。逆にHSPの方は、DOESのEにも表れているように、共感性がとても高いです。
なので、見る人が見れば区別できるとは思うのですが、当事者からしたらそこまで判別することは難しく、例えば発達障害を抱える人が、「自分はHSPだったのか。原因が分かったのなら安心だ」と支援の手を借りるチャンスを逸してしまうかもしれません。
うつ病にしても発達障害にしても、早めに治療や支援につながることで予後がよくなると言われているので、このタイミングが遅れることは、その後の人生に悪影響を及ぼすこともあり得ます。
逆に、HSPだと思って精神科を受診してみたら、実はうつ病だった、発達障害だったということもあるかと思います。この場合は、治療や支援につながるきっかけとなるわけですから、考えようによってはラッキーなケースだと言えるかもしれません。
いずれにせよ、HSPという流行に安易に飛びつくのではなく、冷静に考えてみることが大事です。また、どうしても心配であれば、自己判断せずに精神科の先生やカウンセラーに相談してみることもよい方法だと思います。
おわりに
今回のようなHSPや、発達障害のように一つの枠組みが流行すると、それに飛びつく人が増えるのは世の常のような気がします。
それで得られるメリットもあれば、デメリットもあるので、そこを冷静に見極めていく姿勢が必要だと思います。
これは私のような支援する側の人間にも言えることで、あまり大きな声では言えませんが、なんでもかんでも「発達障害」にしたがる人というのは、正直います。
なにかラベリングをすることで分かったような気になってしまい、それ以上思考停止してしまうという人も少なくありません。(正直なところ、私自身にも覚えがある話です…)
なので、私自身、流行の考え方に流されすぎないよう、
でも使える部分は活用して、といった柔軟さを忘れないようにしたいと思っています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!