こころふ日記 ~公認心理師が子育てや心理学のことなどを語るブログ~

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シリーズ依存症② ~そもそも依存症って何? どんな依存があるの?~

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こんにちは。

公認心理師のこころふです。 

 

依存症シリーズ2回目ということで、今回は「そもそも依存症って何?」「どんな依存があるの?」というテーマで書きたいと思います。 

むしろこちらが先の方がよかったかもですね。

 

依存症とは? 

 

「依存症」についてとても簡単に言うなら、 

「ある物事をやめたくてもやめられず、日常生活に支障が出てしまう状態」のことです。 

 

いくつか例を出します。 

 

お酒を毎晩たくさん飲み、二日酔いで仕事に行けないこともしばしば。やめなきゃいけないと頭では分かっているのにやめられない。

→アルコール依存 

 

一度だけのつもりで手を出した「覚せい剤」。いつも「これで最後にしよう」と思うのに、ついついまた買ってしまう。最終的には覚せい剤使用がバレて、逮捕されてしまう。 

→薬物(覚せい剤)依存 

 

気分転換のつもりで始めたパチンコ。気がつけば毎日通ってしまい、負け続け、いつしか借金までつくってしまい、「もうやめたい」と思うのにやめられない。 

→ギャンブル(パチンコ)依存 

 

いずれも、「やめたいのにやめられない」かつ「生活に支障が出てしまっている」状態です。こういう状態であれば、依存症といってよいでしょう。 

 

 

どんな依存症があるの? 

 

例でも挙げたように、依存の対象となるものはさまざまです。 

なかでもよく取り上げられるのが、アルコール依存、薬物依存、ギャンブル依存の3つで、これらはエビデンス(科学的根拠)がしっかりしている概念だと言われています。 

 

最近では、WHOがつくるICD-11(国際疾病分類)において、「Gaming  disorder」(一般的に「ゲーム障害」「ゲーム症」などと訳される)が掲載されることが決定したため、ゲームへの依存が話題になることも増えてきました。 

 

この他にも、買い物依存、ネット依存、摂食障害、窃盗症(クレプトマニア)などなど、(専門家によって意見は分かれるものの)依存症の一種として捉えられる症状はけっこう存在します。 

いずれも「やめたいのにやめられない」という特徴が共通しています。 

 

 

物質依存と行動嗜癖 

 

このようにさまざまな種類のある依存症ですが、大きく2つに分類することができます。 

それが、「物質依存」「行動嗜癖(行為依存、プロセス依存)」です。 

要は、依存する対象が「モノであるか、行動であるか」という違いです。 

 

ちなみに「嗜癖」というのは、何かにハマっているといった意味で、英語では「addiction」。 

宇多田ヒカルのヒットソング「Addicted To You」は「キミに夢中」といったような意味になります。 

 

物質依存は、アルコール、大麻、シンナー、覚せい剤、ニコチン、処方薬、市販薬などへの依存が挙げられます。 

「え?処方薬や市販薬の依存症があるの?」と思われた方もいるかもしれませんが、実は処方薬依存、市販薬依存の人はとても多いと言われており、深刻な問題です。(詳しくはどこかで書きたいと思います) 

 

行動嗜癖の対象となるのは、ギャンブル、ゲーム、買い物、ネット、窃盗、セックス、リストカットなどの行動が挙げられます。 

専門家によって、どこまでを依存または嗜癖と認めるかは、意見が分かれることもあります。 

 

また、物質依存、行動嗜癖(行為依存)のほかに、「関係依存」も含めた3つのカテゴリに分けられることも多いです。 

「関係依存」には、恋愛やDVなどへの依存、ストーカーなどが含まれることもあります。 

 

「依存症」といっても、実に多種多様だということがお分かりいただけたかと思います。 

 

 

クロスアディクションという概念 

 

2つ以上の依存対象をもつ人も多くいます。 

これを「クロスアディクション」と言います。 

 

例えば、アルコールへの依存を抱えながらギャンブルにもハマっていたりとか、処方薬に依存しながらリストカットもあるなど、実にさまざまです。 

 

また、しばしば依存対象が変化することもあります。 

最初は酒にハマっていたけど、次第に大麻や覚せい剤などの違法薬物にハマり、最終的には風邪薬(市販薬)への依存(規定量を超えて飲んでしまう)に落ち着く、というようなケースもあるようです。 

 

前回の「人はなぜ依存症になるのか?」でも書きましたが、何かに過度に依存してしまう背景には、孤独感や生きづらさがあり、精神疾患を抱えている人も少なくありません。 

 

そのような“辛さ”を紛らわすために何かに依存してしまう、というメカニズムは共通しているのです。 

 

なので、例えばアルコール依存の人から、仮に完全に酒類を取り上げることができたとします。そうすればたしかにアルコールを摂取することはなくなるでしょうが、根本的な辛さはなくなっていません。そうすると、アルコール以外のものに依存対象が移り、別の依存症になってしまう、ということがあり得るのです。 

 

つまり、単に依存対象をその人から取り上げる、といった対応では、根本的な解決にならないのです。

 

もちろん個々によって事情はさまざまであり、辛さの種類によって、依存対象の選び方も変わってくるのではないか、という意見もあります。 

また、依存対象によって、どのような支援をするかという方針が異なってくる場合もあります。 

例えば、同じ物質依存でも、合法なもの(アルコールや処方薬など)と違法なもの(覚せい剤や大麻など)があります。

 

行動嗜癖にしても、ゲームはもちろん合法ですが、窃盗などの違法となる行為もあります。 

 

合法か違法かによって、支援のアプローチが変わることもありますし、あとは、当たり前かもしれませんが、違法であると知りながら相談にくるという人はなかなかいません。 

結果的に、支援を受けるチャンスを逃してしまうことにもなってしまうので、難しい問題だと思います。 

 

 

おわりに

 

今回は、依存症という病気がどのようなものか、また依存対象にはどのようなものがあるのかをざっと取り上げてみました。 

次回からは、それぞれの依存対象ごとに、その特徴をより具体的に書いてみたいと思います。 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました! 

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