こころふ日記 ~公認心理師が子育てや心理学のことなどを語るブログ~

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シリーズ依存症⑤ ギャンブル依存のウソ・ホント

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公認心理師のこころふです。

不慮の事故でPCが壊れたので、すぐさま新しいPCを購入。

以前のPCは壊れる前から異様に重かったので、新しいPC(性能も前よりいいらしい)のスピードに驚きを隠せません。

たぶん100倍くらい速い!(体感)

快適!!

 

テンションも上がったところで、今回はギャンブル依存について書きたいと思います。

なお、これまでに書いた依存症関連の記事はこちらです。

 

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ギャンブル依存とは?

そもそもギャンブルとは?という話からになりますが、

日本では、競馬、競艇、競輪、オートレース、法的には遊戯にあたるパチンコ、パチスロ、非合法の闇カジノなどもそうです。

広くとらえて、宝くじ、株、FX、先物取引などの投資も含める場合があります。

 

ギャンブルをやめたくてもやめられず、日常生活に支障が出てくるようになると、ギャンブル依存の状態といえるでしょう。

特徴として、ギャンブルへの渇望、ギャンブルの衝動を抑えられない、ギャンブルの負けをギャンブルで取り戻そうとする(負け追い)、人間関係、仕事などに悪影響が出る、などがあります。

また、日本国内では、圧倒的にパチンコ、パチスロの割合が多い(8割くらい)のも、海外と比べたときの特徴の一つです。

 

正式な診断名

なお、正式な診断名は、ギャンブル依存症ではなく、「ギャンブル障害」(Gambling disorder)です。

DSM-5というアメリカ精神医学会がつくる精神科医の診断マニュアルで、そのように決まっています。

また、WHOがつくるICDという診断基準では、現行のICD-10だと「病的賭博」という名称ですが、2022年に出版されるICD-11ではやはり「ギャンブル障害」になることが決まっています。

 

日本ではギャンブル依存が多い、はホント??

厚生労働省が2013年に行った調査で、なんと約536万人(4.8%)もの人がギャンブル依存であるという報告がされ、メディアでセンセーショナルに取り上げられました。

 

しかし、その後の調査でこの数字は大幅に減ります。

2017年度の調査では3.6%(320万人)となり、200万人以上も減るという謎。

そもそもこの数字は、SOGSというスクリーニングテストにより導き出されたものであり、正式に診断を受けた人数ではありません。あくまでスクリーニングであり、ギャンブル依存の「疑い」がある人の数なのです。

さらには、「生涯のどこかでギャンブルの問題を抱えていた」人数なので、現在はギャンブル依存とはいえない人も含まれた数字です。

諸外国では、直近1年間の数字で議論されるのが一般的なのですが、同じ条件での数字を出してみると・・・

 

0.8%! 約70万人。

これは諸外国並の数字です。

 

最初の“536万人”というインパクトが強すぎて、日本はギャンブル依存が多いというイメージを持たれがち(最近まで私もそう思ってました…)だと思うですが、実態とはかけ離れた数字と見たほうがよさそうです。

数字を鵜呑みにしてはいけないという好例だと思います。

 

実は自然回復率が高い??

依存症というと、「治りにくい」「一生付き合っていくもの」というイメージもあるかと思います。

ですが、先ほどの数字を見直してみましょう。

2017年の調査によれば、約320万人が生涯のうちどこかでギャンブル依存(疑い)だったわけですが、直近1年に限ってみれば、約70万人なのです。

つまり、250万人がギャンブル依存(疑い)の状態から抜け出していることになります。

これは約8割にも及ぶ数字であり、かなりの回復率です。

 

しかも、ギャンブル依存(疑い)を抜け出した人たちの中で、どこかしらの相談機関を利用した人はかなり少数とのことです。

つまり、多くの人は、ギャンブル依存から自然回復していることになるのです。

正直、この数字を知ったとき、私は驚きました。

「依存症は、支援なくして回復が難しい病気」という思い込みがあったからです。(というか、そう教えられてきた)

 

もっともこれは、ギャンブル依存が軽いとか、放っておいていいとか言いたいわけでは決してありません。

ギャンブル依存(疑い)の方の中には、深刻な症状の方も含まれており、最悪の場合、精神的に追い詰められ自ら死を選んでしまう人もいます。

つまり、重症度を見極め、適切な支援、対策をしていく必要があるということです。

 

相談の現場で見るギャンブル依存者の像

依存症の相談機関で働いていたときの話ですが、ギャンブル依存の人は、アルコール依存、薬物依存といった物質依存の方と比べると、まだ社会生活がなんとか成り立っている方が多かったと感じます。

身体に有害な物質を取りこむわけではなく、あくまで精神的な依存なので、身体的な健康は保たれることが多いからでしょう。

問題となるのは、やはり経済的な面です。

〇百万というレベルで借金をつくり、奥さんにばれ離婚寸前になり、すがるような思いで相談に来た、という方もいました。

相談にくる途中、パチンコ店の横を通り、誘惑に負けそうになった、と話す方もいました。

 

私自身はギャンブルをした経験がほぼないので、正直なところギャンブルにハマる人の気持ちは、十分に理解できないところもあります。

ただ話をしてみると、真面目な方が多く、自分のギャンブル行動をどうにかしたいという切実さを感じました。

 

 

 社会資源について

自然回復が多いとは言え、支援が必要な人というのは確実に存在します。

回復のために役立つ資源にはどのようなものがあるかを紹介します。

 

①自助グループ(GA、ギャマノンなど)

 同じ依存に関する悩みを抱える人たちが集まるグループです。GA(ギャンブラーズ・アノニマス)は、ギャンブル依存の問題を抱える当事者が集まる場所、ギャマノンはその家族が集まる場所です。自助グループでは、参加者が順番に、自身の体験や近況、思いを自由に語る“ミーティング”が中心になります。ミーティングを通じ、自分の気持ちが整理されたり、悩みを抱えているのが自分だけではないのだと知り、安心感を得られやすいですし、一歩先行く先輩(課題を乗り越えつつある人)からアドバイスを受けることもできます。

 かつては、「依存症からの回復のためには必須!」とも言われてきた重要な資源です。ただ、集団や雰囲気になじめない人、合わない人がいることも間違いなく、そういう方に無理に参加を勧めるよりは、別の資源を活用すべきかと思います。

 

②専門医療機関

 全国的にも数は少ないですが、依存症治療専門の医療機関に相談するのも一つの方法です。回復プログラムなどを実施しているところもあります。ただ、ギャンブル依存(ひいては依存症全般)の場合、薬物治療が必ずしも有効ではないため、過度な期待は禁物かもしれません。

 

③行政相談窓口

 精神保健福祉センターや保健所などがこれにあたります。特に精神保健福祉センターでは、依存症相談に力を入れ始めているところが多く、認知行動療法をもとにした集団療法や家族教室などを行っているところも多いです。最初の相談窓口としてはよいと思います。(個人的に相談する敷居が低いのではないかと思います)

 

④回復支援施設

 地域で在宅のまま回復を目指すのが難しい方の場合、NPOなどが運営する回復支援施設を利用する場合があります。同じ悩みを抱える仲間との生活をとおして、自分の課題と向き合うことになります。施設で生活をしながらGAに通い、退所後もGAに通い続けるという人もいます。

 

⑤相談室、カウンセリングルーム

 医療機関と比べると、じっくり話を聴いてもらえるというメリットがあるのではないかと思います。定型的な回復プログラムではなく、相談者個々に応じたオーダーメイドの支援を行っている相談室もあります。保険適応ではないため、それなりの費用がかかることが難点でしょうか。

 

⑥パチンコ業界

 これは意外と思われるかもしれません(私自身、とても意外でした。本当にすみません・・・)が、パチンコ業界、特に大手のところは、依存症対策に力を入れているところは多いです。私が参加したことのあるギャンブル依存の勉強会で、最も参加者が多かったのがパチンコ業界の方々で、とても驚きました。

 「パチンコ依存症者をつくりだして儲けているのではないか」と思われがちですが、私が関係者の方に直接聞いてみたところ、パチンコ業界も世間のイメージが悪くなることは避けたいのだと話していました。イメージが悪くなることは、社員の働くモチベーションの低下にもなるからだそうです。長く適度に遊び続けてもらうことが理想だという話も聞きました。(病的なほどハマってしまうと、途中でドロップアウトしてしまう)

 例えば、パチンコホールで働く人は、明らかに度を越えたパチンコプレイヤーには、声掛けをするなどの工夫をしているそうです。

注:別にパチンコ業界の回し者ではないですよ(笑)

 

おわりに

いろいろな要素が絡んでいるテーマであり、私自身も勉強中なのですが、なるべく多くの視点から書いてみたつもりです。

少しでも参考になったとすれば幸いです。

 

 

 今回の内容は、以下の文献を参考にしています。

『よくわかるギャンブル障害』(著:蒲生裕司) 星和書店

『ギャンブル等依存問題 正しい理解のために』(編集:月間アミューズメントジャパン編集部)

 

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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