こころふ日記 ~公認心理師が子育てや心理学のことなどを語るブログ~

公認心理師のこころふが、子育てや心理学のことなど気ままに書くブログです。

保護者や関係者から子どもへの“指導”を求められるときの対応②

こんにちは。こころふです。

公認心理師として、対人援助職をしています。

 

前回、このような記事を書きました。

よかったら読んでみてください!

kokorofu.com

 

いわゆる“問題児”に手を焼く親御さんや関係者から多い相談、というか要望が、

「この子に厳しく指導してやってください」です。

 

別に子どもを“指導”することそのものが悪いなんていうつもりはありません。

むしろ適切なタイミングでの指導は必要です。

 

ですが、上記のような文脈で「指導」という言葉が使われるとき、

その要望をそのまま受け入れてしまうと、子どもからの反発を招くだけで、

百害あって一利なし、ということになりかねません。

 

優先すべきは、やはり“関係づくり”だと思います。

 

この“関係づくり”は、相談に連れてこられる子どもとだけではなく、相談者(つまり親御さんや関係者)とも必要になるものです。

 

ただ、子どもと相談者との考えが対立的であったり、関係が悪かったりする場合、両者と並行して関係をつくっていくのは簡単ではありません。

両者の気持ちに寄り添い、理解を示し、細心の注意を払いながら両者がおり合えるポイントを探す努力をすることになります。

 

今回は、具体例を挙げて、このような相談があったときにどのように対応するが望ましいのか、私なりの考えを書いてみたいと思います。

なお、とりあげる事例は架空のものですが、実際にあった事例をミックスしてつくったものです。

 

事例

とある施設で生活する中学生男子Aくん。Aくんは、周りの子や施設職員に対して横柄な態度が目立ち、時に暴力的な行為があったり、自傷行為をしたりもします。

過去に父親を亡くしており、母親も病気がちだったことから、小学生のころから施設で生活しています。

最初こそ素直な子でしたが、思春期になるにつれ、上記したような行動が起こるようになりました。

困り果てた施設職員は、Aくんの行動改善を期待して、Aくんに対して指導的な態度で関わってほしいと心理師である私に相談を持ち掛けました。

 

と、こんな感じの内容です。

 

まず、職員さんの困り感はとても理解できます。

Aくん本人の問題だけですめばまだしも、時々とはいえ、周りへの暴力的な態度がみられたり、自傷行為はやはり周りの気持ちをざわつかせます。

施設という集団生活において、Aくんは平穏を脅かす存在なのでしょう。

何らかの対策・工夫が必要なのは言うまでもありません。

 

一方で、Aくん自身の困り感も強いと思われます。

幼くして父親を亡くしていること、また長期で家族と離れて生活をしなければならないことは、まだ10代のAくんにとって、とても辛い体験だったはずです。

 

このことが、Aくんの現在の行動と無関係とは思いません。

おそらく思春期という多感な時期であることも相まって、自身の不安、辛さ、孤独感、生きづらさなど、様々な感情が日々渦巻いているのではないかと思います。

 

そもそも、暴力だとか自傷行為を、好き好んでやる人は珍しいわけで、そうせざるを得ない状況に追い込まれているのではないか、と当事者の心理的背景に思いをはせることが重要です。

 

対応

この事例において、いわゆる専門家のもとに連れてこられたAくんに対し、「そういうことはやってはいけないよ」と指導的にかかわるだけで改善が望めるでしょうか。

冷静に考えれば、多くの人が、それでは不十分、もしくは逆効果だと感じることと思います。

 

しかし、今まさにAくんの行動に巻き込まれ、心身ともに疲弊している施設職員にとってみれば、一刻も早くAくんの行動を落ち着かせたいわけです。

周りの子を守らなければいけないという責任感もあるでしょうから、なおのことです。

 

そんな職員さんに対して、「もっとAくんの気持ちを考えろ」と外部の人間が偉そうに言ったところで、解決しないこともまた明らかです。ただ失望感を与えるだけでしょう。

 

さて、ではどうしたらよいのでしょう。

 

まずは、Aくんと施設職員両方の話を丁寧に聞き、今の大変さ、困り感に共感を示し、時にねぎらいの言葉をかけることになります。

 

それを繰り返すことで、両者との信頼関係を築いていきます。

信頼関係ができれば、Aくんも自身の心情を打ち明けてくれるようになるかもしれません。

気持ちを打ち明けることそのものが、Aくんにとっての精神的な癒しにつながります。

 

また、信頼関係ができることによって、多少のことなら、こちらの意見に耳を傾けてくれるようになるかもしれません。

 

「周りの子に、もうちょっと優しくすることができたらいいね」とか「職員さんもAくんのことを思って指導してくれてるんだと思うよ」などの声かけに、耳を傾けてくれるようになれば、少しずつでもAくんの行動に変化が起こってくるはずです。

 

施設職員の側にしても、Aくんに対する困り感を外部の人間に吐露することができ、大変さを分かってもらえたとなれば、精神的な余裕が生まれ、Aくんに対してのネガティブな感情がゆるくなるかもしれません。

 

そのうえで、Aくんに対して必要なのは、“指導”ではなく“関係づくり”だと考えていることを丁寧に伝え、理解してもらえるように努力します。

 

これらのアプローチは、Aくんと職員との関係改善につながり、結果的にAくんの行動が落ち着くことにもつながるはずです。

 

ここで、私はAくんにも職員にも指導的な関わりをしていないばかりでなく、アドバイスらしきこともそれほどしていません。

ただただ、両者の話を聞き、気持ちに共感・理解を示したばかりです。

これだけで改善につながるケースはあります。

むしろ、変に指導やアドバイスをするからうまくいかないという場合もあります。

 

おわりに

相談の現場で働いていると、正論や指導、説教といった類のものはほとんど役に立たないなぁと感じます。 

“何を伝えるか”よりも“どんな関係性のもと伝えるか”、の方が数倍大事だと思います。

 

もちろん、困り果てている相談者にこのことを理解してもらうのは、それほど簡単なことではありません。うまくいかないこともあります(;´∀`)

 

でも、誠意をもって関わり続けることで、少しずつ状況がよくなっていくことは多いです(*^^*)

長くなりましたが、今日はこのあたりで。

 

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

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