こころふ日記 ~公認心理師が子育てや心理学のことなどを語るブログ~

公認心理師のこころふが、子育てや心理学のことなど気ままに書くブログです。

依存症支援“初心者”のあたなへ①

こんにちは、こころふです(*^^*)

ざっくり言うと、対人援助の仕事をしている公認心理師です。

 

 

私はある時期、依存症支援に携わっていましたが、初めてのころは何をしたらいいのかわからず、途方に暮れていたことを思い出します。

 

振り返って思うことは、依存症支援“初心者”向けのガイドブック的なものがあったらな~ということです。

そういうものがあったとしたら、数年前の自分に渡してあげたい(笑)

 

というわけで、タイトルにもあるように

最近、依存症支援を始めた“初心者”の方に、これだけは押さえてもらいたいというポイントを凝縮して、簡単にまとめてみたいと思います!

 

ちなみに過去に「シリーズ依存症」という記事を16個書いていますので、

よかったらこちらもお読みください!

シリーズ依存症① ~人はなぜ依存症になるのか? 回復のために必要なのは?~ - こころふ日記 ~公認心理師が子育てや心理学のことなどを語るブログ~

シリーズ依存症② ~そもそも依存症って何? どんな依存があるの?~ - こころふ日記 ~公認心理師が子育てや心理学のことなどを語るブログ~

シリーズ依存症③ ~アルコール依存という病気~ - こころふ日記 ~公認心理師が子育てや心理学のことなどを語るブログ~

シリーズ依存症④ ~薬物依存って何? 処方薬、市販薬への依存って?~ - こころふ日記 ~公認心理師が子育てや心理学のことなどを語るブログ~

シリーズ依存症⑤ ギャンブル依存のウソ・ホント - こころふ日記 ~公認心理師が子育てや心理学のことなどを語るブログ~   

シリーズ依存症⑥ ゲーム依存について考えてみた。 - こころふ日記 ~公認心理師が子育てや心理学のことなどを語るブログ~

シリーズ依存症⑦ クレプトマニア~万引きをやめられない精神疾患~ - こころふ日記 ~公認心理師が子育てや心理学のことなどを語るブログ

シリーズ依存症⑧ 自助グループについて - こころふ日記 ~公認心理師が子育てや心理学のことなどを語るブログ~

シリーズ依存症⑨ 家族支援って何をするの? - こころふ日記 ~公認心理師が子育てや心理学のことなどを語るブログ~

シリーズ依存症⑩ 認知行動療法とSMARPP - こころふ日記 ~公認心理師が子育てや心理学のことなどを語るブログ~

シリーズ依存症⑪ リストカット・自傷 - こころふ日記 ~公認心理師が子育てや心理学のことなどを語るブログ~

シリーズ依存症⑫ 香川県のゲーム規制条例の問題点 - こころふ日記 ~公認心理師が子育てや心理学のことなどを語るブログ~

シリーズ依存症⑬ 共依存とイネイブリング - こころふ日記 ~公認心理師が子育てや心理学のことなどを語るブログ~

シリーズ依存症⑭ 底つき体験とは? - こころふ日記 ~公認心理師が子育てや心理学のことなどを語るブログ 

シリーズ依存症⑮ ダルクって何? - こころふ日記 ~公認心理師が子育てや心理学のことなどを語るブログ~  

シリーズ依存症⑯ 個別支援の必要性 - こころふ日記 ~公認心理師が子育てや心理学のことなどを語るブログ~

依存症ってなに?

一言でいえば、「何かに夢中になり、やめたくてもやめられず、日常生活に支障をきたしている」という状態が、依存症です。

 

どんなに夢中になっていたとしても、日常生活に支障が出ていなければ、依存症とはいいません。

どんなにゲームにはまり、長時間プレイしていたとしても、例えばそれ自体で稼ぐプロであったり、そうでなくても生活はふつうに送れている人を依存症とは呼びません。

 

逆にお酒の場合でいうと、大した量を飲んでいなくても、しょっちゅうそれで仕事を休みクビになってしまうようであれば、アルコール依存だと言えるでしょう。

 

依存症と言うと、「だらしない」「意志が弱い」などのネガティブなイメージをもつ方もいるかと思いますが、それは誤解です。

依存症は、誰でもなる可能性があります。

 

どんな依存があるの?

世の中、いろんな依存であふれています。

〇〇依存と名付ければ、なんでも依存症になってしまう風潮もある気がします。

でもここでは、主要な依存を挙げてみたいと思います。

 

やはりよく挙げられるのはこの3つでしょう。

アルコール依存、薬物依存、ギャンブル依存、です。

このあたりはエビデンス(科学的根拠)がしっかりしていると言われています。

 

それに加え、今何かと話題なゲーム依存

WHOが出しているICD-11にも「Gaming disorder」が収載されることになりました。

ゲーム障害、ゲーム症などと訳されるのが一般的です。

参考:よくわかる依存症 ゲーム、ネット、ギャンブル、薬物、アルコール こころのクスリBOOKS

なぜ依存するの?

脳が快感を覚える

アルコールや覚せい剤、大麻といった依存物質には、人の脳に快感を与える性質があります。

脳はこの快感を記憶し、何度でも同じ快感を味わいたいと欲します。

しかし、繰り返し体内に摂取しているうちに、同じ量では快感を得づらくなっていき(これを耐性といいます)、だんだんと摂取量が増えていきます。

こうして依存物質のとりことなっていくのです。

 

ただ、これだけでは説明できない点があります。

例えば、お酒を飲んでも依存する人、しない人がいます。

成人になればほとんどの人が一度はお酒を飲んでみると思いますが、アルコール依存になってしまうのはその中の一部の人です。

 

つまり、依存症になりやすい人、そうでない人がいるのです。

 

自己治療仮説

エドワード・カンツィアンという精神科医が提唱したのが、自己治療仮説です。

参考:人はなぜ依存症になるのか 自己治療としてのアディクション

依存症になってしまう人の多くは、孤独感や生きづらさ、あるいは精神疾患を抱えていると言います。

こういった人たちが、アルコールや薬物などを摂取することで、こころの辛さを一時的にでも解消できたとします。

そうすると、辛い気持ちを感じるたびに、同じようにアルコールや薬物に手を出すようになってしまうのです。

 

この一連の行動が、あたかも自己治療しているかのように見えることから、

自己治療仮説というわけです。

 

アルコールや薬物といった物質だけでなく、ギャンブルやゲームといった行動でも似たようなメカニズムが働いています。

 

これらのことを踏まえれば、依存症支援で大事なことは、

その人を無理に依存対象から引き離すことではなく、

その人が抱える生きづらさや孤独感といった、こころの辛さを解消してあげることにあると言えるでしょう。

 

どんな相談先があるの?

専門医療機関

専門の医療機関は、全国的にも多いとは言えませんが、あるにはあります。

一般の精神科や心療内科でも診てくれるところはありますが、依存症についてよく知らない精神科医もいるので、できれば専門のところがよいでしょう。

 

ただ、依存症そのものは薬で解決するのが難しいものです。

抗酒薬という、酒をやめやすくする薬も存在しますが、その薬を飲むかどうかは患者自身にゆだねられるわけですから、飲まなければそれでおしまいです。

 

薬はあくまで補助手段と考えたほうがよいでしょう。

 

自助グループ

自助グループの発症は、AA(アルコホーリクス・アノニマス)という、アルコール依存を抱える人たちの集まりでした。

これがさまざまな分野に発展していき、薬物はNA(ナルコティクス・アノニマス)、ギャンブルはGA(ギャンブラーズ・アノニマス)といった具合に、多くの自助グループがうまれています。

 

同じ依存問題を抱える仲間が集まり、ミーティングなるものを行います。

簡単に言ってしまえば、自分の現状や悩みを語り合うのですが、これは一度でいいので、参加してみると雰囲気がつかめてよいと思います。

オープンミーティングと呼ばれる、当事者以外の人でも参加できる回があるので、そこに参加(見学)してみましょう!

 

自助グループへの参加は、依存症から回復するための王道的な方法です。

「自助グループへの参加なくして回復なし!」と考える支援者もいます。

それくらい重要な資源なのです。

 

ただ、この考え方には賛否もあります。

自助グループに合う人、そうでない人がいるという点は、覚えておいたほうがよいでしょう。

 

ダルク (もしくは他の回復支援施設)

ダルクは、民間の依存症回復施設です。

主に薬物依存を対象にしていますが、私が知っているダルクでは、アルコール依存の方も多く入所されていました。

稀にギャンブル依存の人もいると聞きました。

 

同じ病気を抱え、回復していこうとする仲間が共同生活するわけです。

ダルクから自助グループにも通います。

数ある方法の中でも、ダルクはかなり回復率が高いと言われています。

 

正直、最初は私も会うのが怖かったのですが、実際に会ってみると、ダルクの人ってめちゃくちゃ仲間思いで、人間的魅力のある人が多いことに気づかされました。

ダルク 回復する依存者たち――その実践と多様な回復支援

 

なお、ダルク以外にも、民間の回復支援施設はあります。

 

精神保健福祉センター

各都道府県に必ず1つはある行政機関です。

最近では、依存症支援に力を入れるところも増えてきています。

当事者(依存症を抱える本人)向けのプログラム、家族向けの家族教室など、さまざまな事業を行っているところも多いです。

 

最初の相談先として、比較的ハードルが低いのが、この精神保健福祉センターかなぁと思っています。

ここから自助グループやダルク、医療機関を案内される場合も多いです。

 

どんな人が相談にくるの?

依存症を抱える本人よりも、その家族が最初の相談者となることが多いです。

 

なぜなら、本人はそもそも自分が病気であると思わないし、それを指摘されたとしても否認しがちです。

それは依存症の特徴の一つでもあります。

 

そして、まず困るのは、本人よりも家族である場合が多いのです。

というわけで、家族の話を聞き、相談にのるところから支援は始まります。

 

 

長くなりそうなので、ここで一旦区切ります。

次回は、どんな支援をしていくのか、具体的に書いてみたいと思います(*^^*)

 

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