公認心理師のこころふです。
以前、依存症支援に携わっていた経験があることから、依存症について書いています。
今回のテーマは「自助グループ」です。
これまでの記事でも何度かふれてきていますが、あらためてどういったものかについて書いてみたいと思います。
自助グループとは?
相互援助グループともいわれますが、ここでは自助グループで統一して書きます。
文字通り、助け合うためのグループです。
例えばAA(アルコホーリクス・アノニマス)であれば、アルコール依存を抱える当事者たちが集まるグループで、参加者同士で助け合い、酒をやめ続けることを目標とします。
自助グループは、依存症からの回復にとって非常に重要な資源です。
自助グループに通うことで、「もう〇年もアルコール(薬物、ギャンブル)はやめています」と言えるようになる人はたくさんいます。
自助グループができた経緯
1930年代のアメリカで、2人のアルコール依存者が偶然出会い、お互いの経験を語り合ううちに、酒をやめられるようになったのが、自助グループAAの始まりとされています。
当時、医者もさじを投げていたアルコール依存患者の治療を、当事者が発見した形になったのですから、これは医学史上の大事件でした。
AAが広まるにつれ、他の薬物依存やギャンブル依存など、さまざまな依存対象の自助グループがつくられていきます。
ちなみに、アノニマスとは、「無名の」「匿名の」という意味です。
実際、自助グループの参加者は、本名ではなくアノニマスネームというニックネームのような名前で呼び合う慣習があります。
さまざまな自助グループ
アルコール依存・・・AA(アルコホーリクス・アノニマス)、断酒会
薬物依存・・・NA(ナルコティクス・アノニマス)
ギャンブル依存・・・GA(ギャンブラーズ・アノニマス)
クレプトマニア・・・KA(クレプトマニアクス・アノニマス)
買い物依存・・・DA(デターズ・アノニマス)
性依存・・・SA(セックスアホーリクス・アノニマス)
などなど。
挙げるとキリがないほどたくさんあります。
マイナーな依存種になればなるほど、探すのが大変になる傾向はあります。
例えばAAなどは全国どこでも大体みつかりますが、DAは県外でないと見つからないとかはありますね。
また、同じ系列のアノニマスグループであっても、グループによって雰囲気が違うという話も聞きます。
「あっちのAAは合わなかったけど、こっちのAAは参加しやすい」といったこともあり得ます。
どんなことをするのか?
“ミーティング”という自分の体験、思いなどを順々に話していく活動が中心になります。その際、他者の話を批判してはいけません。
また、12ステップと呼ばれるプログラムがあります。
12ステップとは、例えばAAであれば、
1.私たちはアルコールに対し無力であり、思い通りに生きていけなくなっていたことを認めた。
2.自分を超えた大きな力が、私たちを健康な心に戻してくれると信じるようになった。
といった課題が12項目設けられていて、それに1つずつ取り組んでいくのです。
これを聞いて、「む?」とひっかかった方もいると思います。
自助グループではよく「ハイヤーパワー」という言葉が使われます。「自分の力を超えたより大きな力」というような意味です。それは神であったり、偉大な力であったり。
宗教とは関係ないらしいのですが、そういったものを連想してしまう方は少なくありません。それゆえ、1回参加してもすぐにドロップアウトしてしまうという人がたくさんいます。おそらく、日本だからこそなじまないという部分もあるのだと思います。
私も見学させていただいたことがありますが、正直なところ、最初は違和感を覚えました。「ハイヤーパワー」などの用語が特に。
すぐに慣れはするんですけどね。
予備知識がないと、その慣れるまでに脱落してしまう可能性は高いと思います。
最初、当事者が一人で参加するのはとても勇気がいると思います。
支援者がかかわっている場合、事前に許可をとったうえで、いっしょに参加してもらうとよいですね。
自助グループは絶対か?
以前は、自助グループへの参加が回復のための絶対条件だと考える人も多かったそうです。自助グループに参加しない人を、「回復への意欲がない人」と捉えてしまう場合もあったそうです。
しかし、今では、そこまで極端な考え方の人は少なくなったと思います。
たしかに自助グループは、回復を考えるうえで、とても重要な資源ではあるのですが、上記したように、自助グループになじめない人は少なからずいます。
何度か通ってみて、どうしても合わない、むしろ苦痛だという人にとっては、通うことがマイナスになることも考えられます。
「自助グループに行かないなら回復なんて無理だ」ではなく、「別の方法を考えよう」が建設的な考え方です。
また、支援者側の態度として、「自助グループを紹介しておけば間違いない」という考えがかなり蔓延しています。私自身も、少し前までそう信じていました。
でも、安易に自助グループを紹介することを疑問視する声もあります。
依存症に陥る背景はさまざまであるはずなのに、「依存症→→→自助グループ」というようにパターン的にアドバイスするのはどうなの?ということです。
なかには、ちょっとした生活の支援で立ち直る方もいます。(軽度の場合)
それをちゃんとしたアセスメント(見立て)もせず、必ずしも合うとは限らない自助グループを無理に勧めたしたら、もしかしたらマイナスの影響のほうが大きいかもしれません。
このあたりは、私も依存症支援にどっぷり浸かっていた頃は考えることができない視点でした。
このような考え方があるということを、離れてみて初めて知ったのです。
逆に言うと、それくらい依存症支援にとって自助グループが重大な位置づけにあるということなのですが・・・。
自助グループが合わない人にはどのような支援が必要か、ということを常に考えておかなければいけませんね。
おわりに
今回は自助グループというテーマに絞って書いてみました。
自助グループというものの理解に、少しでも役に立てたとしたら幸いです。
ただ、ここまで書いておいてなんですが、百聞は一見にしかず、です。
自助グループは、基本的には当事者のみが参加を許されているのですが、
実は「オープンミーティング」と呼ばれる、家族、医療福祉・行政関係者など、当事者以外の人でも参加できる回があります。
こういった回に参加(見学?)することで、自助グループの実際を知ることができますので、興味のある方は足を運んでみるのもいいかもしれません。
グループ名と地域名で検索をかけていくと、どこでやっているのかおそらくわかると思います。
もっとも、このコロナ禍では厳しいか・・・
オンラインでミーティングを始めたグループもあると聞きます。
それはそれでよいことですが、早く通常運営できるようになることを祈っています。
以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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