こんにちは。
公認心理師のこころふです。
以前、依存症支援に携わっていたことがあり、最近は依存症のことをシリーズで書いています。
今回は、薬物依存のリハビリ施設である「ダルク」について説明したいと思います。
ダルクとは?
ダルク(DARC)は、Drug Addiction Rehabilitation Centerの略で、薬物依存者の回復と社会復帰支援を目的とした民間のリハビリ施設です。
薬物依存等の依存問題を抱える人が、施設に入所し、仲間同士で助け合いながら回復を目指します。
スタッフは依存症からの回復者であり、入所者にとっては「先行く仲間」でもあるわけです。
医療機関や相談機関への通所による相談だけでは回復が困難と思われる方が、対象となることが多いです。
例えば、住んでいる地域にいわゆる薬物仲間が多ければ、会う機会も多くなり、薬を断つことは難しくなります。そこで、居住地域とは離れたダルクに入所することで、再発のきっかけを減らすというメリットがあります。
ちなみに、最初に「薬物依存者の回復のための施設」と書きましたが、私の知っているダルクでは、アルコール依存者が入所者の約半数を占めていたり、まれにギャンブル依存の方が入所することもあると聞きました。
あくまでメインは薬物依存者なのでしょうが、幅広く受け入れている施設も多いようです。
その歴史
ダルクの創設者は、近藤恒夫さんという人です。かつては薬物乱用者でした。
近藤さんは、アルコール依存症回復施設であるMACの創設者であるアメリカ人神父ロイ・アッセンハイマーと出会い、MAC職員を経て、1985年に西日暮里の一軒家に東京ダルクを開設しました。
その後、沖縄ダルク、高知ダルクを設立し、1998年には日本ダルクを設立しました。
ダルクは年々増え続け、現在は全国で50か所ほど存在します。
どんな活動をしているの?
それぞれの特色があるので一概には言えないのですが、ミーティング、回復プログラムが中心となります。
以前紹介したSMARPPのようなプログラムを活用している施設もあります。
ミーティングは、ダルク内部だけでなく、外部のNA(ナルコティクス・アノニマス)という自助グループに通う形でも行われます。
スタッフの話では、外部のミーティングに通うことで、ダルク退所後もミーティングにつながりやすいようにする狙いがあるとのことでした。
私の知っているダルクでは、沖縄の伝統芸能であるエイサーに力を入れていて、慰問活動などもし、積極的に地域交流していました。
ダルクのイメージ
おそらく世間では、「どうせやめられないんでしょ?」というイメージを持つ人が多いのではないかと思います。
少なくともいいイメージを持つ人はまだまだ少ないのではないでしょうか。
少し前になりますが、マーシーこと田代まさしさんが、ダルクを利用しながらも、薬物の再使用でまた逮捕されてしまったというニュースもありました。
マーシーがダルクでがんばっているという話は聞いていたので、個人的には残念な気持ちもありました。
もちろん、すべての人がうまくいくわけではありません。
ただ、立ち直った人の姿を私自身実際に目にしていますし、失敗を繰り返しながらも、何度かダルクに入り直し、最終的にはうまくいくという人もいます。
ダルクの有効性を示した研究もあるので、事項で紹介します。
ダルク追っかけ調査
国立精神・神経医療研究センターの嶋根卓也先生が中心となって行われた、その名も「ダルク追っかけ調査」というものがあります。
ダルク利用者の断薬状況、就労状況などの予後を追跡したプロジェクトです。
その結果ですが、入所者の50%は2年間にわたりクリーン(薬物を使用しないこと)を維持していました。
また、退所後の薬物使用率は10%程度で、約50%は自助グループに定期参加を続けているというものでした。
これは、かなり高い成績と言えます。
他の回復資源で、ここまでの成績は難しいでしょう。
断薬が続く人の共通項としては、
1.仲間や職員との関係が良好であること
2.回復のモデルとなる仲間の存在
3.自助グループへの定期的な参加
とのことです。
ダルク関係者の人間性
これはあくまで、私個人の感想にはなってしまいますが、参考までに。
私は仕事の上で、ダルクの方に協力してもらうことが何度もありました。
その中で印象深かったのは、ダルクのスタッフや利用者の人間性でした。
正直なところ、私がダルクの人たちと会うまでは、多少の、いやけっこうな偏見があったと思います。
だって元薬物乱用者、しかも現在進行形で依存問題と闘っている人たち。
ちょっと怖いイメージを持っていました。
ところが、実際に会ってみると、人間的な魅力にあふれる人が多く、仲間への強い思いやりを感じました。
特に、やはり回復を経験してきたスタッフの方からは、同じ依存問題で苦しむ仲間を助けたいという強い気持ちが感じられ、「なんという人格者!」と驚いたほどでした。
苦難を乗り越えてきた人たちだからこそ出せる、人間的な強さみたいなものを感じたのでした。
おわりに
国内の依存問題において、ダルクの存在は非常に大きいものです。
にもかかわらず、世間からのイメージはあまりよくないか、そもそもあまり知られていないかもしれません。
一度会ってみると、そのイメージはガラリと変わる可能性があるので、チャンスがあれば是非会ってみてほしいなあと思います。
コロナの影響で機会が減ってしまっているとは思いますが、積極的に地域交流しているダルクであれば、意外と身近でイベントをしていたりもするかもしれません。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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