こころふ日記 ~公認心理師が子育てや心理学のことなどを語るブログ~

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シリーズ依存症⑩ 認知行動療法とSMARPP

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こんにちは。

最近チョコレート依存ぎみのこころふです。

 

「これはカカオ成分の割合が高いチョコだから大丈夫!」などと自分を正当化しながら、食べまくっております。

 

チョコレートの依存性、あなどりがたし・・・

 

といったところで、今回は認知行動療法とSMARPPについて書いてみます。

どちらも耳なじみがない方も多いと思いますので、順を追って説明します。

 

 

認知行動療法とは?

 

いわゆる心理療法と呼ばれる手法には、数えきれないくらい多くの種類があります。

精神分析、クライエント中心療法、行動療法、遊戯療法、内観療法、森田療法・・・etc

 

その中にあって、エビデンス(科学的根拠)が高く、効果が実証されているのが、認知行動療法です。

簡単にいうと、人の偏った認知や行動のパターンを修正することで、精神的な不調を改善しようとする心理療法です。

 

例えば、「上司に呼び出されたときは、絶対に怒られる」と思い込んでいる社員がいたとします。

上司に声をかけられる度にびくついてしまうので、精神健康上よろしくありません。

しかし実際のところ、呼び出されたら100%怒られる人は稀だと思います(あるとしたら相当ブラックというかパワハラチックな気が…)

そういった客観的な視点を取り入れることで、「呼び出されても怒られるとは限らない」という認知が獲得できれば、それほどびくつかず安定したメンタルでいられるわけです。

セラピストは、相談者の認知のクセを把握し、よりバランスのよい認知へと変化が起きるようサポートします。これが認知行動療法です。

 

もともとは、うつ病に対して有効な手法として広まりましたが、その後さまざまな心の問題に幅広く用いられるようになりました。

最近では、依存症にも有効であることが分かってきて、治療の現場で用いられるようになってきています。

個別の心理療法として用いられることが多いですが、集団療法の中に認知行動療法の方法論が取り入れられることもあります。

これは、依存問題を抱える当事者だけでなく、家族教室などの家族支援の場でも使われています。

 

 

 

SMARPP(スマープ)とは?

とつぜん横文字になってしまい、なんのこっちゃと思われる方もいるかもしれません。

SMARPPというのは、Serigaya Methamphetamine Relapse Prevention Program(せりがや覚せい剤再発防止プログラム)の略です。

このシリーズでも何度か名前を挙げさせてもらった、松本俊彦先生がつくった薬物使用再発防止の治療プログラムです。

 

参加者は基本的には当事者のみですが、ダルク(薬物依存のリハビリ施設)の方がアドバイザーのような形で参加する場合も多くあります。認知行動療法の考え方がベースにあり、主に集団療法として用いられます。

 

専門医療機関や精神保健福祉センター、ダルクなどで全国的に広まってきており、多摩のタマープ、川崎市のだるま~ぷなど、その地域に応じたご当地SMARPPが次々と誕生しています。

 

SMARPPの流れ

私も何度か同席したことがあるので、どのような流れで行われるのか、説明したいと思います。

基本的には、どこも予約制でやっていると思いますが、とびこみでも対応しているところはあるかもしれません(というかせっかく来た人を突っ返すのは心苦しい)。

 

まず、とてもウェルカムな姿勢で当事者さんを迎え入れます。

否認が多いと言われる薬物依存の当事者が、このような回復プログラムにチャレンジするということ自体が称賛ものなのです。

お・も・て・な・し(古いか…)の精神で対応します。

お茶菓子や飲み物を用意するところも多いです。

アットホームな雰囲気づくりを心掛けることで、プログラム参加の継続率を高めるねらいがありますが、率直に話してもらいやすくなるというメリットもあります。

 

参加者が集まると、メインのプログラムの前に、どのくらい薬物をやめ続けられているか各参加者に報告してもらいます。 

「1か月使ってません!」「実はおととい使ってしまいました…」などなど、参加者によりけりですが、意外と使ってしまったことを正直に言う方もいます。

 

薬物をやめ続けられている人には、もちろんそれを称賛します。

そしてここが重要ですが、「使ってしまった」と正直に話せた人にも、「よく話してくれましたね」と称賛します。

このことによって、“正直に話すことはよいこと”という風土がつくられていきます。

もし、再使用を責めてしまったとしたらどうなるでしょう?おそらく次は来てもらえないでしょう。

 

以前にも書きましたが、依存症支援の看板を掲げている支援機関の中には、違法薬物を使用していることが分かったとしても、通報しないというスタンスのところがけっこうあります。

具体的にどのくらいの機関がそうなのかはわからないですが、ホームページに「通報しません」と明言している精神保健福祉センターさえあります。

理由は簡単で、そうしないと相談してもらえないからです。

 

賛否はあると思いますが、違法薬物を使用している人たちを、支援の土台に乗せるというのは、それだけ難しいということなのです。

 

プログラムの内容

①トリガー

プログラムは、認知行動療法をベースにしています。

中核的なキーワードのひとつとして、「トリガー」があります。要は引き金です。

当事者が何をきっかけに薬物使用に走ってしまうのか、を考えていくのです。

 

トリガーは人によりさまざまですが、例えば、コンビニのトイレでよく使っていた人は、コンビニのトイレに入ると使いたくなってしまったりするそうです。

あと多いのが、かつての薬仲間との交流を再開すると、とたんに再使用に走ってしまうとか。

 

そういったトリガーが分かってくると、じゃあそれを避けるにはどうしたらよいか?という話に持っていけるわけです。

上の例でいえば、なるべくコンビニのトイレは利用しないとか、かつての薬仲間とは関係を断つ、といった工夫ができるようになると、再発のリスクを減らすことができます。

 

②メリット・デメリット

もう一つ個人的に面白いと思ったテーマがあります。

「薬物を続けることのメリット・デメリット」「薬物をやめることのメリット・デメリット」をそれぞれ書き出してもらうというワークがあるのです。

 

これ、ちょっとびっくりしませんか?

私もびっくりしました。

「薬物を続けるメリット?薬物をやめることのデメリット?そんなことを考えさせるなんて何の意味があるんだ!?」

と、思いました。

 

なんでこんなワークがあるかというと、薬物を続けている人は、その人にとって何かしらのメリットがあるからこそ続けているのです。

もっと言うと、薬物が“生きるための杖”のようなものになっている人が多いのです。

つまり、突然薬物を取り上げられてしまったら、もう生きていけない、最悪の場合死を選んでしまうという人もいるのです。

これこそ「薬物をやめた場合のデメリット」と言えるでしょう。

 

もちろん薬物を使い続けることを推奨するわけではありません。

もし、ある人にとって、薬物を使うメリットが「生きにくさの解消」だとしたら、別の方法でそれを代替できないか、を考えていくのです。

別の趣味をつくったり、誰かにSOSを求められるスキルを身につけたり、その代替手段も人によって違ってくると思います。

この過程がないと、一時的にやめられたとしても、再発する可能性が高いでしょう。

 

SMARPPはファーストフード?

これはSMARPPをつくった松本先生自身が話していますが、SMARPPはファーストフードのようなもので、とっつきやすいけれど、これさえやれば完璧といったものではないとのことです。

むしろ、自助グループのような濃厚なプログラム、例えるなら高級フレンチを食べに行くほうがよい、と。

 

でも、高級フレンチはなかなか気軽に行けるものではないので、誰でも食べに行けるファーストフードから入り、そのうえで少しずつ高級料理に慣れていってもらいたい、といったコンセプトなのだそうです。

 

おわりに

今回は、依存症業界で確実に広がりを見せている、SMARPPという認知行動療法ベースのプログラムを中心に説明してみました。

 

先ほども書いたように、これだけやっていれば絶対回復できる、といったものはないのですが、SMARPPはその入り口としては素晴らしいと思います。

これは支援者側にも言えることで、ファシリテーター(プログラムを進行する人)が依存症にそれほど詳しくなかったとしても、テキストを読み上げていくだけで、それなりにプログラムとして成立しますし、ファシリテーター自身の勉強にもなるようにつくられているのです。

 

SMARPPなどの入り口をきっかけとして、より細やかな個別支援ができるようになることが理想的だと思います。

個別支援の必要性については、のちほど書いてみたいと思います。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

 

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