こころふ日記 ~公認心理師が子育てや心理学のことなどを語るブログ~

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シリーズ依存症⑯ 個別支援の必要性

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こんにちは、こころふです。

 

このシリーズも長くなってきました。

絞りだせばまだ書けるかもしれませんが、正直ちょっとしんどくなってきたので、いったんこれで区切りにしようかと思います。

 

さて、今回は「個別支援」の必要性について書いてみたいと思います。

参考文献を最初にあげておきます。

 

『本人・家族・支援者のためのギャンブル依存との向き合い方 一人ひとりにあわせた支援で平穏な暮らしを取り戻す』(明石書店)です。

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著者は、中村努さん(NPO法人ワンデーポート理事)、高澤和彦さん(浦和まはろ相談室)、稲村厚さん(司法書士)、編集は認定NPO法人のワンデーポートです。

 

タイトルどおり、ギャンブル依存の話がメインですが、他の依存問題にも大いに関わってくる内容です。

今回はこちらの本を大いに参考にして書いています。

 

依存症支援の常識??

これまでも少し触れてきましたが、依存症業界には以下のような「常識」があります。

 

「依存症は病気です。専門医の診察を受け、自助グループにも通いましょう。家族も共依存という病気なので、家族の自助グループや家族会に参加しましょう」

 

こんな感じです。

もちろん、これはこれで嘘ではないのですが、かなり一面的な考え方なので盲信は禁物です。

なぜかというと、自助グループへの参加でよくなる人もいれば、よくならない人もいるからです。

 

発達障害という視点

参考文献として挙げた『ギャンブル依存との向き合い方』の大きな特徴は、依存問題の理解に「発達障害」という視点を取り込んでいることです。

これは「ギャンブル依存」だけではなく、アルコール依存や薬物依存、ゲーム依存といったさまざまな依存問題にも大いに関わることです。

 

発達障害とは?

めちゃくちゃ簡単に説明するなら、発達障害は、「発達に偏りが生じる脳機能の障害」ということになります。

発達障害のなかでも、依存症にかかわってくるのは、自閉スペクトラム症、AD/HDが主だと思います。

自閉スペクトラム症は、対人コミュニケーションの苦手さ、こだわりの強さなどが特徴となります。場の空気を読みづらく、周りに合わせた行動が苦手です。

AD/HD(注意欠如多動性障害)は、不注意、多動性、衝動性が主な特徴となります。例えば、子ども時代に教室をウロウロ歩き回っていたり、授業に全く集中できなかったりした人は、AD/HDの可能性が高いです。

 

 

問題は、これらの特徴の影響で、他者となじめず孤立してしまったり、深く傷ついてしまったりする人が多いことです。いわゆる二次障害といわれるものです。

こういった生きづらさ、強いストレスを解消するためにギャンブルなどに手を伸ばし、過剰にはまってしまうことがあるのです。

 

「典型的な依存症タイプ」と「発達障害を抱えるタイプ」

ここではかなりざっくりとではありますが、2つのタイプに分けてその特徴を整理してみたいと思います。

もちろん、発達障害の有無以外にも、着目すべきポイントはあるのですが、あえてかなり単純化した分け方をしています。

 

典型的な依存症タイプ

いわゆる典型的な依存症タイプというのは、例えばギャンブルをやる前には自立した社会生活を送れていた場合が多いです。発達障害の特性がないか、あっても薄い人。

このタイプの人は、自助グループでミーティングを続けることによって回復に向かうことが十分期待できます。ただ、否認が強く、簡単には自助グループなどの資源につながらないことが多いです。

 

発達障害のあるタイプ

依存問題うんぬんの前に、自立や社会生活に問題を抱えていることが多く、本人の特性に応じたきめ細かな支援が必要です。知的障害を抱えている場合もあります。

例えば、金銭管理能力に乏しく、ギャンブルをする前から日常的に散財をしていたりする人。こういった場合は、依存症アプローチよりも、どう金銭管理を支援するかということに着目すべきでしょう。社会福祉協議会の金銭管理支援を利用するなどの選択肢があります。

このタイプの人に自助グループを勧めても、グループになじめず不安感を強めてしまったり、ただ通うだけになってしまいミーティングに意味を見出せなかったりといったことが心配されます。

 

このように、発達障害の有無を確認することは、その後の支援方針を決めるうえで、とても重要になります。

にもかかわらず、私の知る限りでは、依存症支援の場で、まだまだこのポイントが軽視されていると感じています。なにを隠そう、私自身もそうだったので…。

 

ではどうしたらよいの?

「依存問題がある。依存症だ。自助グループを勧めよう」といったあまりに単純な考え方は、危険だと思います。

大事なのは、依存行動が起こる前から社会生活に問題を抱えていなかったか、発達的な偏りがないか、その他の精神疾患を抱えていないか、家族関係に問題がなかったか、などなど、多様な視点でその人を理解しようとすることです。

 

その中で、例えばもともと金銭管理に課題を抱えていた人であるのなら、自助グループを安易に勧めるのではなく、金銭管理の支援を受けてもらう、とか。

友達もおらず趣味もなく、ひまつぶしにパチンコにお金を費やしてしまっているのであれば、何か他のお金のかからない趣味をいっしょに探す、とか。

その人に合った支援方法が思いつくはずです。

 

おわりに

今回は、依存問題を抱える人への「個別支援」に焦点をあてて書いてみました。

文字にすると簡単なことのようですが、これが意外と難しいと感じています。

やはりどうしても人間、その人の目立った症状ばかりに目を向けてしまいがちで、「この症状にはこう対応すべきだ」という観念にしばられてしまいがちです。

そうではなく、もっとその人の背景、問題の根っこに目を向け、オーダーメイドで援助をしていくことが理想だと思います。

簡単ではないですが、私もそれを目指していきたいと思っています。

 

冒頭に書きましたが、いったん依存症シリーズは区切りとしたいと思います。

読んでくださった方、どうもありがとうございました(^^)

 

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