こころふ日記 ~公認心理師が子育てや心理学のことなどを語るブログ~

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シリーズ依存症⑬ 共依存とイネイブリング

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こんにちは。

公認心理師のこころふです。

 

依存問題に関心があり、ここまで書いてきました。

今まで、これほど集中的にひとつの分野について書くということがなかったのですが、なるべく体系的にバランスよく書こうとするのがこれほど大変だとは・・・

本を出すような人ってやっぱりすごいんだなぁと思います。

 

今回は、「共依存」「イネイブリング」といったキーワードについての解説をしてみたいと思います。

どちらも、依存症分野では、よく見聞きする言葉なので、簡単に説明します。

 

共依存とは?

「共依存」は、ある人との関係に過度に執着してしまうことを表した言葉で、「関係性の依存」ともいわれます。

 

アルコール依存症の現場から生まれた言葉で、アルコール依存患者に振り回される家族の特徴を説明するために使われるようになったそうです。

 

アルコール依存者は、家族の世話なしには社会生活が送れなくなり、逆に家族は、依存者本人の世話をとおして、自分の価値を見出す、といった関係性があります。

 

こうなると、家族は本人と適切な距離をとることが難しくなり、回復には到底結びつかないような対応をとってしまうことが多くなります。

 

イネイブリングとは?

共依存と大いに関連のある言葉です。

「イネイブリング(enabling)」とは、依存行動を「支える」「可能にさせる」という意味の言葉です。

「尻ぬぐい行動」なんて言われたりもします。

 

例えば、ギャンブル依存で借金を抱えた本人の借金を、家族が肩代わりしてあげる行動がこれにあたります。

家族としては、本人を借金の取り立てから救おうとしたり、愛情を注いで改心させたい、といった善意からなのですが、結果的には本人のギャンブル行動を助長させてしまう可能性が高いです。

 

他にも、二日酔いで仕事に行けない夫の代わりに、妻が会社に電話を入れる行動などもイネイブリングの一種です。

ここでは、しづらい電話を妻が代わりにすることで、夫が困りを感じることなくやり過ごせてしまっています。

 

どちらの例も、本人が自分の問題に向き合うチャンスを逃してしまった形になるので、結果として依存行動を続けやすいようにしてしまっているのです。

 

日本では「問題があったら、家族が尻ぬぐいするのが当たり前」といった感覚が強いように感じるので、とても日本人的な行動だなあとも思います。

 

ちなみに、イネイブリングをしてしまっている人のことを、「イネイブラー」と呼ぶことがあります。

ただこれは、あくまで善意で動いている家族に対して、ネガティブなレッテルを貼ることになるという点で、あまりよしとしない見方もあります。

 

どうしたらいいの?

まずは、家族が自身が「共依存」の状態に陥っていること、「イネイブリング」をしてしまっていることを自覚することが大切です。

自分のしていることに意味がないどころか、逆効果になっていると分かれば、自分の行動パターンを変えていくことも可能です。

 

分かりやすいところで言えば、借金の肩代わりはしない、お酒の問題の尻ぬぐいはしない、などですね。

家族でなく、本人が困る(問題に向き合う)ようにもっていくことです。

 

とはいえ、一人でこれを実践していくのはなかなか難しいので、専門医療機関や精神保健福祉センターなどで開催される家族教室や、家族の自助グループ(アラノン、ナラノン、ギャマノンなど)に参加をするのも一つの方法です。

 

おわりに

私が家族支援にかかわりながら思ったのが、「なんて皮肉なんだろう」ということでした。

家族がよかれと思ってやっていることが、依存問題をより深め、複雑化させているという事実には、胸がしめつけられる思いがしました。

ほとんどの方が、いい人、優しい人なのですが、優しすぎるがゆえに、問題がこじれてしまっている例を何件も見ました。

 

ただ、さまざまな勉強、アドバイスを糧にして、立ち直っていく家族にも出会うことができ、「変われるんだ」とこちらが励まされたりもしました。

 

人との関係って本当に奥深いと感じます。

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

 

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