こころふ日記 ~公認心理師が子育てや心理学のことなどを語るブログ~

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トークンエコノミー法 うまくいくケース、うまくいかないケース|子どもの自発性を引き出すコツ

こんばんは 

2児の父であり長期育休中こころふです 

 

私は心理職として10数年働いてきましたが、 

実際のところ、育児にどのくらい心理学が活かせるのか、試している日々でもあります。 

 

以前、わが家でトークンエコノミー法(特定の行動を増やすことを目的とする行動療法の技法の一つ)を取り入れているという記事を書きましたが、 

今回それをもう少し掘り下げて書いてみたいと思います。 

 

 

わが家のトークンエコノミー活用状況 

 

わが家では、娘がお手伝いをしてくれたら、シールをあげ、一定数たまったら、おもちゃなど娘が欲しがるもの(それほど高くないもの)をプレゼントする、というルールになっています。 

 

以前からある程度軌道にのっていたのですが、最近になり、さらに効果が加速してきたような気がしています。 

 

例えば、昨日のできごとですが、 

長女は幼稚園から帰ってくるなり、「お花に水あげる~、庭の掃除もする~、シールちょうだい」と言い出しました。 

 

私がOKすると、本当に積極的に水やりや掃除を始めたではありませんか! 

しかもそれを真似して、下の子も水やりを始めるというオマケつき!! 

 

水やり、庭掃除なんて、私は妻から言われない限りまずやらないようなズボラ人間(いかん!)なので、「本当におれの子か?」と疑いたくなるレベルです(笑) 

 

お手伝いのほかにも、歯みがき、ご飯の完食などの場合にもシールをあげていますが、やはり以前より確実に対象行動が増えてきたと感じています。 

 

なお、この方法が有効なのは、ある程度ルールを理解できるようになる3歳くらいからだと思います。 

 

 

うまくいくケース、そうでないケース (相談にのってきた経験から) 

 

手軽に取り入れられる手法であるため、私が心理職として子育て相談にのってきた中で、何度も提案してきた方法です。 

 

例えば、宿題をさぼりがちなお子さんがいたとしたら、 

本人や家族とよく話し合ったうえで、 

「宿題ができたら1ポイント、20ポイントたまったら漫画を1冊買ってもらえる」などのルールをつくり、お子さんの学習へのモチベーション向上を目指したりします。 

 

ただ、このように誰にでも理解しやすい簡単な方法でありながらも、うまくいくケースとそうでないケースがあります。 

 

この違いは何なのでしょう? 

 

もちろん、支援者としての私の見込み、詰めが甘かったり、単純にその家庭に合う・合わないという理由もあるでしょうが、それらを超えて、私の経験上感じている点を挙げてみたいと思います。 

 

 

うまくいかないケースにありがちなこと 

 

①親子関係がわるい 

 そもそも親子間でうまくコミュニケーションがとれていません。

 なので、システムの導入自体でつまづく可能性もありますし、導入できたとしても、お互い感情的になりやすい状態なので、そのやり取りの中でケンカになってしまいます。

 うまくいく可能性は低いので、まずは親子関係の改善を目標にするか、同時並行で進めるべきだと思います。 

 

②親の子どもへの期待が強すぎる 

 親が期待をかけすぎてしまうことは禁物です。

 ルールづくりを話し合う中で、どうしても課題の難易度が高くなってしまい(例:「勉強を3時間できたら1ポイント」など。勉強嫌いな子がそんなにできるはずありません!)、結局子どもはほとんどトークンをもらえない、という悲しい結果になりがちです。

 そうなると、親はがっかりするわ、子どもの自己肯定感は下がるわで、よいことはありません。 

 このへんは、支援者が間に入り、うまく調整していけるとよいです。 

 

③子どもが課題をこなしても、親がトークンを与えない 

 せっかく子どもが課題をこなしても、親がトークンを与えない場合があります。

 単にルールを忘れていることもあれば、そのときの機嫌であげない、ということもあります。

 これをされると子どもの行動強化が起こらないだけでなく、親への不信感にもつながってしまうので注意が必要です。

 また、トークンはなるべく行動の直後に与えるようにしましょう。

 これを「即時フィードバック」といいます。 

 

④バックアップ強化子のバランスがわるい(高価すぎる) 

 トークンと交換できるごほうびのことを「バックアップ強化子」と言います。

 先の宿題をさぼりがちな子の例でいうと、漫画のことです。

 例えば、目標とする課題が簡単でトークンもすぐに集まるのに、バックアップ強化子はそれに見合わず高価なおもちゃ(ゲームソフトなど)であった場合、親は何度も高価なおもちゃを買い与えることになってしまい、結果的に続かなくなります。

 バックアップ強化子を決める際は、課題の難易度、必要なトークン量とのバランスをよく考えましょう。

 もし、課題が簡単なようであれば、必要なトークン量は多く設定するなどの工夫が大事です。 

 

 

うまくいくためのコツ 

 

以前の記事で書いた内容とかぶりますが、 

うまくいくためのコツについてあらためて簡単に挙げておきます。 

 

①実現可能な課題を設定する 

②表を視覚化しておく 

③なるべく子どもがワクワクするような工夫をする 

 (トークンを魅力的なシールにする、表に好きなキャラクターの挿絵を入れるなど) 

④即時フィードバックを行う 

⑤ルールは適宜柔軟に修正する(そのときの気分で勝手に変えるのはNG) 

⑥コーディネートしてくれる存在(支援者)がいればなおよし 

 

他にもあるはずですが、思いついた点を挙げました。 

 

 

 

おわりに 

トークンエコノミーは愛着のあるテクニックなので、今回ちょっと深堀してみました。 

 

わが家ではたまたま(今のところ)うまくいっていますが、もちろん万能な方法ではありませんし、慣れないと失敗するケースも多いです。 

 

ただ、仮に失敗したとしても、状況が悪化しないよう配慮することは必要かと思います。それを防ぐためにも、やはり親が期待をかけすぎないこと。 

 

過度な期待は子どもに過度なプレッシャーを与えますし、失敗したときお互いの精神的ダメージが大きくなりやすいです。 

 

手軽に導入できることがメリットなので、「失敗してもいいや」くらいにかまえて取り組むとよいと思います。 

 

 

なお、わが家のトークンエコノミーも、まだまだ工夫の余地があると考えているので、バージョンアップが成功したら、また報告させていただくかもしれません(^^) 

 

 

以上、最後まで読んでいただき、ありがとうございました!